ダートムーア

ダートムーアの事例(イングランド/イギリス)

🌿 里山の風景について

ダートムーアの農場は通常、谷状の地形に石造りの家があります。その周辺には、石の壁や土手の上にある生け垣で囲まれた小さな畑があります。これらの畑は、谷の斜面にそって「ニュー・テイク」と呼ばれる大きな放牧地に広がっています。その先には、広い草原や低木が生える「ムーア(荒野)」があります。

ここでの農業は、主にヒツジや牛などの家畜を育てることです。これらの家畜は、農地だけでなくムーアでも草を食べます。ムーアの多くは「コモンズ(土地の共有地)」と呼ばれ、いくつかの農家が共同で利用しています。

丘の上のほうには、泥炭(ピート)や湿原(ブランケット・ボグ)があります。これらは多くの生き物にとって重要な場所であり、大量の炭素を蓄えています。丘からは、小川や川が谷に流れています。

この地域には、古代から人々が住み、農業をしてきた歴史があり、ムーアの中には多くの遺跡があります。近くの森は、昔から燃料や家を作るための木材を提供してきました。

⚠️ 課題と脅威

この地域での農業は収入が少なく、長年にわたり政府の補助金に依存してきた面がありました。しかし2020年にイギリスがEUの共通農業政策から脱退後、補助金が削減されつつあります。

コモンズの多くは自然や遺跡の保護エリアとして指定されていますが、人々のレクリエーションの場所にもなっています。近年、農家はコストを抑えるために農場を広げたり、働く人を減らしたりしています。そのため、コモンズの管理が困難になってきました。

2000年からは、自然を守るために「アグリ・エンバイロメント・スキーム」という制度が定められたことにより、放牧のルールが決められました。これは、放牧される家畜の数を減らし、小さな草木を増やすことが目的でした。しかし2005年から農業支援が作物の生産と関係しなくなったため、この制度はうまくいかず、動物が食べない草ばかりが増えてしまいました。

政府は「過放牧」を止めるために、さらに放牧の家畜数を減らそうとしています。しかし地元農家はそれではむしろ自然の状態が悪くなると考えています。

広大で開けたムーアを見て、多くの人は「ダートムーアは野生の自然」であると思っています。若い農家たちは、農業を続けるのが困難なため、新しい環境保護制度を待っていますが、それは政府の問題によりなかなか始まりません。

一部の土地の持ち主は、「リワイルディング(自然に戻す)」をしようと考えていますが、農業をやめることで自然がよくなる、というのは誤った認識といえるでしょう。